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宇土巻子の食卓日記

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#37 (2017.9.12)
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今年の敵 その1
 春うらら、温室で簡易椅子に腰を下ろして種を播く。まだ日差しは弱いけど長い冬のはてにやって来た至福の時間だ。
 野菜、ハーブ、花、冬の間に集めた種を育苗トレーや3号のビニールポットに埋めていく。頭の中は夏の菜園の様子でいっぱいだ。
 インゲン豆とひまわりの植え場所を巡って真剣に思い悩む。両者とも菜園の壁として菜園の表情を決める重要な役割を負っている。インゲン豆は食卓の常連という訳ではないが、濃い緑のティピは菜園には欠かせない。ひまわりは実用性こそ皆無だが、夏を感じさせるばつぐんの装飾効果がある。実質一辺倒だった10年前だったら地面の浪費以外の何物でもないひまわりをこんなにたくさん栽培するなんて思いも寄らなかった。
 今年はゴッホのひまわり、東北八重(おしんみたいでついセレクト、実際はトーホク種苗の八重咲きひまわりというきわめてシンプルなネーミングなのだが)矮性ミックス、サンフレームなど数種類の種を播いた。バラ及び白や紫の花を頂点とする英国式庭園花ヒエラルキーにおいては最下層に分類されるであろうひまわり、否、ピラミッドに組み込まれることもないだろうひまわり。
 でも最近では残り少ない人生、そんなヒエラルキーに惑わされずに栽培したい花を好きなように栽培するのだと開き直っている。今年はカンナやダリア、ルドベキアやオレンジ単色のキンセンカも栽培することにした。矮性ひまわりの黄色い花とオクラの濃い緑のコントラストを思い描いてウットリしているのである。
 50種類を超す種をまき終えて今日の作業は終了。野菜半分、ハーブと花が残り半分といった割合だろう。
 
 翌日、朝一番に温室に向かう。外気温は10度以下、でも温室に一歩足を踏み入れるとぽかぽかと気持ちがいい。まだ発芽しているはずもないけど、昨日種を蒔いたポットの集団を見て回る。
ひまわり
ネズミの大好物ゴッホのひまわり
 ひまわりの所で足が止まった。ゴッホのひまわりの種を播いた3号ポットの土が掘り起こされて、青く着色された種皮があちこちに散らばっているではないか。あー、やっぱり。昨日、育苗トレーの隙間を横切った影を目の端にとらえたのである。一瞬ネズミかもしれないと思ったけど、気のせいということにして忘れることにしたのである。
 
 やはりネズミだったのか。ゴッホほどではないけど他のひまわりも掘り起こされている。ただちにホームセンターに飛んでいって業務用ネズミ捕りを購入した。
トーホク八重
トーホク八重、
おしんを連想させるネーミング
 冬の間、野鳥のえさ台の下をうろちょろするネズミが気になったので、これを仕掛けたところぽつぽつとエゾヤチネズミがかかっていた。野鳥がこぼしたひまわりの種を食べに来たのだろう。
 ネズミだって猛禽類やキツネのえさとして自然界ではちゃんと役割を担っているわけだから殺生は慎みたいところだが、積もった雪にトンネルを掘って縦横に動き回り、ブルーベリーの樹皮を囓るので農場では大敵なのである。
 被害状況を調べてから、被害を免れたひまわりのポットのそばにネズミ捕りを仕掛けた。
 昼間、何度か様子を見に行ったけど夜活動するのだろうネズミ捕りは空だった。
 
ひまわり
ネズミは見向きもしなかった。
寂しげにうなだれる
 翌朝、温室に直行した。奥の方に仕掛けたネズミ捕りを見に行く。うっ、思わず息をのんだ。折り重なるようにして数頭のネズミがはいっていたのである。最後の1頭と覚しきヤツはまだピクピク動いている。冬の間は1週間で1頭、多くて2頭程度の成果だったのに一晩にしてこんなに大勢のネズミがかかるとは。
 予想外の事態にうろたえてしまった。推測するに箱から漂うおいしそうな匂いに惹かれた母ネズミが箱に入ったものだから、子ネズミたちが我も我もと母の後を追ったのだろう。
 箱の底には粘着テープが貼ってあり、箱に入ったら最後、テープに足を取られて2度と箱から出られないような仕掛けになっている。数えてみると6匹のネズミがかかっていた。一家惨殺、あまりの惨状に手がつかず、頼んでは山の方に捨ててもらった。
 
 種子の被害状況を見て回ると、ひまわりは半分程度、紅花はほとんど食い荒らされ、大豆にも若干の被害があった。他の種子は無事だった。
 ひまわり、紅花、大豆といえばどれも種子から油を絞る植物である。ひまわり油、紅花油、大豆油、その種子はどれも油分を多く含んでいるのだろう。
 
雑草のオオハンゴンソウにそっくり
雑草のオオハンゴンソウにそっくり
 ネズミも大したもんだ。たくさんある種子の中から栄養価の高い油源種子ばかりを正確に狙っている。敵ながらあっぱれ、母ネズミが子ネズミたちに食べるべき種子を教えている最中に起きた惨事だったのかもしれない。
 ひまわりと紅花の種をまき直した。色々なひまわりの種が混じったミックスの中では特定の種子だけが食い荒らされていた。ネズミの油センサーの精度に改めて脱帽。ネズミ一家絶滅騒動の後、温室に平和が戻った。
 
今年の敵 その2
 今年は一念発起して真剣に野菜を栽培することにした。
 いつもは収穫よりも風景を重んじてきたので、収穫についてはそれほど気にかけていなかったのである。新鮮で安全な野菜が食べれればいいやとそれで満足していたのである。
 しかし、冷凍ストッカーの導入を契機として、冷凍野菜の実力を認識するにいたった。トマトだって、青菜だって、ブロッコリーだってどんなにたくさん実っても大丈夫、廃棄することはない。せっせと収穫してせっせと冷凍すれば、次のシーズンまで豊かな食生活を送ることができる。
 今年は去年冷凍したトマトを6月に使い切った。スープやソースなど加熱原料としてとても重宝した。
 冬に焼きナスやオクラ、万願寺唐辛子を煮浸しにして食べた。菜園で収穫したナスはせっせと焼いて焼きナスに、万願寺はオーブンでサッと焼いて冷凍保存しておいたのである。ツルムラサキ、モロヘイヤ、ハンダマなどの青菜は凍ったままパキパキ折ってスープに加えると緑豊かな野菜スープができる。
 青菜類もほとんど毎日使ったけど春先までもったのでとても重宝した。しなびたほうれん草や小松菜に手を出さずにすんだのである。
 
 というわけで、最近、美しい風景と併せて増産という目標が菜園仕事に加わったのである。増産という観点からするとまだまだ学ぶべきことが多い。
 温室で種蒔きして発芽した苗は、いつまでも温室に置いておくと、積算温度の関係だろうか、地面に定植しても株が成長しきらない内に花が咲いて実ってしまうのである。
 著しく早熟になってしまう。その代表選手がスィートコーンで、背丈は低いのに花を咲かせて実を結び、夏を待たずして完熟してしまう。短い軸にバラバラついた実は味はいいけど量が少ないから物足りない。
 毎年、美味しいからそれでもよしとしてきたのだが、今年は発芽後、昼間はポットを温室の外に出し、夜は取り込んで苗を育てた。そして30cmにも満たないなよなよした苗を菜園に定植した。
 するとどうだ、8月には背丈は2メートルをはるかに超え、見惚れるばかりの立派な玉蜀黍が結実したのである。といっても普通ののスィートコーン並みということだけど。
 教科書通りにヤングコーンは間引きして一株一実を心がけた。間引きしたヤングコーンはもちろん冷凍、ヤングコーンの絹のようなひげが美味しいというネット情報に従い、サッと茹でて食べてみたが、取り立てて美味とは言いがたかった。サンマははらわたが一番といった類いの思い込みだろう。
 
 スィートコーンはひげが茶色くなったら収穫する。実はぎっしりついているのにひげは白っぽいままでなかなか茶色くならない。48株植えたのだが、一株の欠損もなくぷっくりと膨れた大ぶりな実が48本、収穫の日を待っている。明日こそ、明日こそと楽しみに待っていたそんなある日、皮がはがされて実が露出したコーンを発見した。実がつつかれた様子もある。
 ヒヨドリに違いない、今年はヒヨドリが群れで農園に居付いてしまい、ブルーベリーやイチイの実をつつき回っていたのである。彼らに気づかれてしまったらおしまい、どうにも手の施しようがない。でも48株もあるんだから少しぐらい分け与えてやってもいいだろうと鷹揚に構えることにした。
 数日留守にしたので菜園から足が遠のいていたのだが、久々に菜園に出向くと目の前には惨憺たる光景が広がっていた。楽しみにしていた玉蜀黍がほとんど倒されて、実がきれいに食べられているではないか。こうまでされるとヒヨドリの仕業とは言いがたい。害獣として話題になっているアライグマの仕業に違いない。
 以前、冬期間休業していたホテルドロームを荒らし回ったテンを捕獲するための害獣捕獲用のかごが倉庫に眠っていたので、それを引っ張り出した。魚肉ソーセージを餌にしてなぎ倒された玉蜀黍の真ん中にかご置いた。
 かごを置いてからまた出かけてしまったので、玉蜀黍の件はすっかり忘れていると、旅先に写真が送られてきた。捕まったタヌキがかごの中で可愛らしい顔をこちらに向けている画像だった。
 犯人はこれだったのか? このタヌキが真犯人かどうかは特定できないもののこういう類いの害獣の仕業だったのである。
 
 48本あったコーンは結局1本も口にすることなく幻のコーンに終わってしまった。でもタヌキを恨む気持ちなどサラサラない。手間をかけて愛情を注いでやれば、タヌキも認める立派なコーンが実るのだと確認できた。それだけで十分、今年栽培したのは「ゆめのコーン」だったけど、来年はもっと糖度の高い「ゴールドラッシュ」で再挑戦しよう。
 いつもの直売所に行ってゴールドラッシュないと聞くとおじさんが畑に走ってもいで来てくれた。猛スピードで家に戻って、熱湯に放り込んで茹でたコーンの美味しかったこと。コーンの旨さは収穫してから口に入れるまでのスピードで決まる。品種や栽培法による違いもあるだろうが、それは味の好みの問題で決めては絶対にスピードなのである。
 
 ネズミとタヌキ、来年はどんな新顔が現れるのか、ちょっと楽しみでもある。

青菜の威力
空芯菜など
手前が空心菜・後方はバイアム、
どちらも美味
 台湾やタイの食堂のメニューには必ず「青菜炒め」がある。空心菜、ハンダマ、ツルムラサキ、バイアム、青梗菜など素材となる青菜は様々だが、私の知る限りでは青菜炒めには一種類の青菜しか使われない。ハンダマだったらハンダマ、空心菜だったら空心菜のみ。肉などタンパク質系の素材はおろかや他の野菜を炒め合わせることもしない。
 辛うじてニンニクが使われる程度なのである。日本で野菜炒めというと白菜、玉ねぎ、にんじんなど複数の野菜にキノコ、肉などを炒め合わせることが多い。色とりどりで美しい。
 海外の食堂で青菜炒めを食べるにつけて、その魅力に惹かれるようになった。青菜と塩だけで十分美味しいのである。日本ではシンプルな青菜炒めがなぜ一般的ではないのか? ずっと不思議に思っていた。以下推測。
 
 台湾やタイでは一年中青菜が生えているからちょっと摘んできて炒めれば手軽におかずが一品増える。沖縄でハンダマの種を探していたら、あれはそこらに生えているものだから種なんかないと言われた。なるほど熱帯、亜熱帯地方では青菜は限りなく雑草に近い作物なのかもしれない。
 日本で青菜といえばほうれん草や小松菜。しかしそれらは雑草ではなく立派な野菜なのである。ほうれん草なんて気むずかしいから栽培も難しい。中華鍋いっぱいのほうれん草はずいぶんと高価なものになってしまうから気軽にもう一品というワケにはいかない。加えて「柔らかい」が食の重要なキーワードになっている日本では、野菜も柔らかく柔らかくという方向で改良されてきたのか、総じて葉が柔らい。青菜炒めはしゃきっとした食感が大切だから葉が肉厚でしっかりしている青菜の方が向いている。
 
 雑草に近い青菜を年中、気軽に摘める熱帯、亜熱帯の地方とは違って、日本では青菜は冬の保存食、漬け物として利用されてきた。野沢菜漬けを筆頭に壬生菜漬け、カラシナ漬けなど日本各地には地方色豊かな青菜の塩漬けが存在する。青菜は炒めて食べる野菜というよりも漬け物として保存する野菜という方向で改良されてきたのかもしれない。だから色とりどりの野菜炒めはあっても、シンプルな青菜炒めにはあまりお目にかからないのだろう。
 
 空心菜でもバイアムでも単独青菜炒めは美味しい。ニンニクを隠し味に塩を振りかけて炒めるだけで十分に美味しい。
 しかし炒めものに適した青菜は入手が難しい。それで数年前から青菜を栽培している。最初はツルムラサキだけだったけどハンダマ、雲南百薬(おかわかめ)が加わり、モロヘイヤが加わり、空心菜、バイアム(おかのり)が加わって、今では菜園の一大勢力を形成するに至った。
 
 雑草に近いから栽培はすこぶるかんたん、雲南百薬とハンダマは種が入手できないから苗を取り寄せるけど、他の青菜は種を播いて育苗して菜園に定植して育てている。気持ちいいくらいどんどん成長する。毎日摘み取っては青菜炒めをこしらえる。
 摘んできた青菜はサッと洗って中華鍋にニンニクと一緒に放り込み、日本酒をたらりと垂らして塩を加えてフタをする。野菜の水分で葉が柔らかくなった(生ではなくなった)ら取り出して皿に盛る。この間2分。箸が進む。大量に摂取できるから体にもいいような気がする。
 今日はバイアム、明日は空心菜というように素材を替えれば毎日食べても飽きない。万一、飽きてもサッと湯がいてナムル風にしたり、鰹節をかけて和風お浸しにすれば目先が代わって美味しく食べられる。
 青菜バンザイの今日この頃なのである。
 
 都会の洒落たエスニック料理店のメニューにのっている空心菜炒めなど軽く1000円は超す。腹が立つからもちろん注文などしない。そもそも空心菜はヒルガオ科の野菜、本家のヒルガオといえばガーデンの最大の敵、その生命力の強さたるや尋常ではなくちょっと油断しようもなら手近な作物に巻き付いて空を目指すのである。
 貪欲なその血をひいているからだろうか、空心菜も頑強そのもの、ヒルガオに似た葉はグングン伸びる。摘んでやらないと葉は20cm近くにも生長し、これも食用分である葉柄と合わせると30cmを超す長さ、可食部分が非常に多く効率がいい。(最近台湾で食べた空心菜はまだ若くて半分くらいのサイズだったが)
 何でこんなに有用かつ手間のかからない青菜が普及しないのか不思議でならない。
 
 ツルムラサキ、ハンダマなど他の青菜も同じようなものだ。今年はツルムラサキのツルを収拾がつかなくなる前にせっせと摘み取って食べたから割合おとなしくしているし、雲南百薬も株数を控えてつるをこまめに切り取ったおかげで緑のカーテンぽく美しく生育している。
 
菜園と想像力
 菜園に苗を定植するのは楽しいものだ。収穫と並ぶ一大イベントともいえる。あらかじめ計画をたてて植えつけ予定図などを手に菜園に向かうけど、結局は出たとこ勝負、ナス科の作物や豆科の作物を連作しないように心がけるくらいのものだ。5区画あるから順々に回していけばいいのだけど、時々、スナップえんどうとトマトを同じ区画で栽培したり、そら豆の後方にナスを植えてしまうからややこしいことになる。教科書に従えば、翌年はその区画には豆科植物もナス科野菜も植えられないことになってしまう。
 それでもまあいいか主義で細かいことは気にせずに大切に育てた苗を植えつける。
 しかし植えつけ前の菜園は、菜園とは名ばかりでそこはただ土の原である。作物を植えて初めて畑とか菜園とか呼べるわけで、何も植わっていない土の原はまことに冷涼としている。堆肥や石灰などを施してもやはりタダの地面である。
 教科書には株間何cm列間何cmに植えなさいよ、と野菜ごとに目安が示されている。
 しかしそれを守る勇気はない。畑とは呼べないただの土の原を前にしてどれだけの人がそのルールを守れるだろうか。だって茶色の冷たい土に小さな苗が心許なげに佇んでいるのである。守れるとすればそれはよほど無慈悲で意思の強い人だろう。
 
 こんなに小さな苗をこんなにスカスカに植えて大丈夫だろうか? スカスカ部分が雑草の巣となって苗は雑草に負けてしまうのではないかという不安がよぎる。
 で、不安から逃れようとしてスカスカ部分にバジルを植えてしまう。ルール破りである。なるほど地面を眺めればバジルが加わったことでスカスカは幾分解消し、バランスがいいように見える。ルールでは1メートル四方に1株だけど2株植えてもたいして問題はないように思える。今は。
 
 夏の菜園を想像してみよう。植えつけられた苗は地面を2次元的に占有するだけでない。成長に伴い空間も占有するのである。作物はたいてい紡錘形に広がっていく。3次元的にみれば地面と合わせて空間ももはや売約済みなのである。1メートル四方に1株というルールには将来的に占有するであろう空間も含まれているのである。ということに足の踏み場もなくなった夏の菜園に佇んでようやく気づくことになる。
 
 よし来年こそは苗の本数を半分に減らして、通路を確保するとともに使い勝手も見栄えもいい菜園にしよう。と去年も誓ったはずなのに。
 
今年気づいた新事実
 何年経っても菜園には、毎年毎年新しい発見がある。
●ナスタチュームの拾い苗は止めた方がいい。
 春先に前年のこぼれ種から芽吹いたナスタチュームを鉢上げするのを無上の楽しみとしてきた。しかし今年、そうした拾い苗は葉ばかり茂って花があまりつかない、ついても時期がすごく遅い、ということにようやく気づいた。
 以前から薄々感じてはいたのだが、今年はその事実が確定的となった。植物学の初歩なのかもしれないけどこれで春先の楽しみがひとつ消えてしまった。
 
●苗はできるだけ自分で育て方がいい。
 少なくともオクラ、ゴーヤー、ツルムラサキ、そら豆、スナップ豌豆、大豆、インゲン豆、スィートコーンについては温室で種を播いて育てた苗の方が市販の苗よりもずっと生育がいい。オクラなどは早く定植したい一心で、本州から苗を取り寄せてしまうのだが、碌なことにはならない。きっとこの土地で育ち、この土地の気候に徐々に順応した苗の方がこの土地にはいいのだろう。
 
そら豆1 ホームセンターで見かけた苗をつい購入してしまった。
そら豆2 去年沖縄で入手したトウマミの種が残っていたので温室で育苗した
そら豆3 早生の春植えブロードビーンの種をイギリスの種苗会社から取り寄せて温室で育苗した。
 そら豆は低温に合わないと花芽がつかないというので、発芽後は昼間はポットを温室の外に出して、夜は取り込むという手間をかけてやったところ、苗はスクスクと育った。
 そして結果は1,2,3とも同じ、これまでになくたくさんのそら豆がほぼ同時期に収穫できた。沖縄のトウマミもイギリス生まれの早生ブロードビーンも生育のスピードも花もマメの付き方もその味も少しも変わらないという新発見。

●収穫適期
キャベツ
中玉と小玉合わせて9個。
キャベツの上でアキアカネがひとやすみ
 収穫は楽しい。この日のために栽培してきたのだからそれは当然だけど、作物によっては楽しいと思えない収穫もある。その筆頭は芽キャベツだろう。長く伸びた軸からひとつずつ芽キャベツをはがすのは力がいるし、退屈この上なく少しもおもしろくない。これが至上の美味なら話は別だが、芽キャベツはハッキリ言うと不味い。小さくて可愛らしいキャベツというところに芽キャベツの唯一の存在価値はある。30歳を超えた息子たちが芽キャベツの収穫だけはイヤだったなーといまだに訴えるほどだ。無理もないと思う。ここ10年くらいは芽キャベツから遠ざかっている。
 
 最近、菜園でキャベツを栽培するようになったが、芽キャベツの親分たるキャベツの収穫も楽しくない。地面すれすれに伸びた短い茎からキャベツの玉を切り取るにはすごく骨が折れる。カタログで見つけた収穫包丁なるものも購入したのだが、頑強な茎の前にあえなく退散。鎌やら剪定ハサミを動員して土まみれになったキャベツを何とか切り取ってきた。
クジャクチョウ
不作の蝶の中でひとり大健闘した
クジャクチョウ
 しばらく北海道を離れるので菜園にある9個のキャベツを収穫することにした。中玉と小玉サイズだが花を咲かせてしまうよりはましと思い、収穫包丁でトライする。すると包丁は小気味よくスパッとキャベツの玉を切り落とした。刃を研いだ覚えもないし、包丁が心を入れ替えた形跡もない。はたと気づいた。
 そうか、これまでは玉が割れる寸前の大玉を収穫していたから茎が堅くなり、この収穫包丁の刃では無理だったのか。
 包丁が気持ちよく働ける時こそキャベツの収穫適期なのだ。
 収穫期は包丁に相談、これからはそうしよう。
 
石垣島箱庭果樹園 7月
 7月の半ばと8月の終わりに石垣島に行って来た。3年したらジャングルというあの言葉は決して大げさではなかった。パッションフルーツはからみ合ったツルが小ジャングルを形成していたし、2月には膝丈だったバナナが7月半ばには3メートルを超して巨大化し8月には花まで咲かせていたのである。
 私の不在中、正子おばあが手下たちに指令を出して世話をしてくれた賜物である。
 
●喜屋武さんがパッションフルーツの棚に漁網をかけてくれた。
 海人の弟さんからもらったという漁網がドーム型の棚に被せてあった。漁網というからごつい網を想像していたのだがそうでもなくてひと安心。パッションのツルが縦横に這い回っているので網本体はあまり目立たない。
 網があって本当に助かった。これがなかったら、収拾のつかない事態に陥っていただろう。せっせとパッションのツルを伐る。これが今回のメインの仕事になった。
 
 暑い。それにしても暑い。色々用事を済ませてから箱庭に到着したのは10時頃。パッションの剪定を始めたけど30分もしないうちにあまりの暑さにギブアップ。暑さと湿気が体にまとわりつくのである。気がつけばあたりに農作業の機械音はなく、もちろん人影もない。
 おばあに聞くと今の時期は、ワーキングタイムは朝はせいぜい9時まで、夕方は4時からだそうだ。熱中症を警戒してすごすご退散。田代さんとランチに行ったり、いつもの林道を走り回ったりして日が暮れるのを待つ。
 
 暑さもピークを越えたようなので、箱庭に戻ってパッションのつるきりを再開。メインの茎を探し当てて3本仕立てにすることにした。入り組んだ枝やツルをバツバツ切り落とす。最初のうちはこわごわ少しずつ、次第に大胆になって切り落としたら大丈夫? と心配になるほどスカスカになった。
 夕食はおばあと一緒にうみの花へ、パパイヤの煮付けが珍しかった。

●喜屋武さんが漁網かけのついでにドラゴンフルーツの苗も植えておいてくれた。
 翌日は6時頃、箱庭に到着。ようやく日が昇った。昨日メークマンで買った肥料を箱庭の周りに植えたローズマリーやハイビスカスなどの根元にばらまく。切り落としたパッションの枝でマルチをする。
 ドラゴンフルーツはサボテンである。ローズマリーとは反対側、ランタナの後にドラゴンが20株近く植わっていた。喜屋武さんが1週間ほど前に植えてくれたそうだ。それは苗というより地面に刺さっているサボテンの切れ端といった方が正確かもしれない。
 切れ端はだいぶ年数が経っているように見える。若干枯れているようにも見える。でも信じよう。あのショッキングピンクの特異な実がたわわに実る日を信じよう。
 ドラゴンの周辺の草をとり、生い茂るセンダングサを刈って、肥料を播く。ローズマリーと同じようにパッションの枝でマルチをして優しい言葉をかけておいた。
 
パパイヤの花
箱庭果樹園、パパイヤの花、実もたわわ
 午後、シャンティガーデンの神田さんの家に寄った帰り道、おばあがパパイヤを取りに寄り道するという。それは道ばたにある主人のいないパパイヤの大木で、実がたくさんついている。鳥につつかれている実も多いので、ひとつずつ調べながらビニール袋に詰め込んだ。重たい、けどまだまだ実はたくさん残っている。時々肥料やるから私のものとおばあは笑う。パパイアはシリシリにしたり、煮物に使うそうだ。
 そういえば途中、アイスを買いに寄った食料品店で野菜マンゴーなるものを発見した。
 84歳になるおばあでさえ初めて見るという。見かけは紛れもなくマンゴーなのに一体どこが違うのだろう。店番のおばあに尋ねても要領を得ないのでとりあえず一袋購入、2個入りが100円だった。(北海道で食べたけど野菜マンゴーはユラティク市場で購入した普通のマンゴーと変わらなかった)
 
 翌日も朝早くから箱庭で仕事。周辺部のオオギバショウ、ランタナ、ハイビスカスに施肥、パッションのつるきりを続行。
 田代さんとランチを約束をしていたので慌てて町に向かう。と車をぶつけてしまった。
 ウーンまずい。おばあが娘さんたちに声をかけて「まぶいぐみ」をやってくれた。
 「魂込」動転して行方知れずになった私の魂を探して元に戻す儀式だという。車のそばで彼女たちが大声で「ウドさーん」と叫ぶ。私も大声で「はーい」と応える。何度か繰り返して終了、そこに落ちている石を拾うのが慣わしという。私も石をいくつか拾ってポケットにいれた。こうして魂は無事に戻って落ち込みから回復した。しかしそれ以降、おばあは私にハンドルを握らせてくれなかった。
 
辺野古新基地NO
 最終便で那覇に飛んで翌日、辺野古に行く。考えることがたくさんあった。キャンプシュワブの前に設置された団結小屋でダンプや機動隊の動きを見張ることになっている。動きがあればキャンプゲート前に座り込むべく待機する。今、権力にとってはこの小屋こそ日本一目障りな構築物だろう。
 死に体にある日本の民主主義を辛うじて支えているのがキャンプに対峙するかのように立てられたこの粗末な構築物だと思った。
 
石垣島箱庭果樹園 8月
 いろいろないきさつがあって何と仁木一家と台湾経由で石垣島に行くことになった。3世代である。チケットもホテルも気にしない旅なんて初めての経験。
 
 台湾では台南郊外の玉井というマンゴーの産地に行った。以前から行きたいとは思っていたが、いつも蝶の季節に合わせて夏は避けていたので行けなかったのある。
 玉井に近づくと斜面にはマンゴーの畑が目立つようになり、市場には各店ごとにかごに盛られたマンゴーがズラリと並んでいる。壮観の一言。
 定番の巨大マンゴーかき氷を食べたあと市場を巡回、販売はかご単位だそうだが、無理をいって4個分けてもらう。生マンゴーは日本には持ち帰れない。おばさんが5本の指を出しのでてっきり500ドル、日本円で2000円かと思ったら50ドル、200円だった。何と1個50円、どこに出しても恥ずかしくない立派なマンゴーである。
ドリアン
ドリアン、見かけは温和しそうなのだが
 仁菜の好物だとういうランブータンも購入、市場から少し離れた露店でドリアンを発見、マンゴーに比べるとかなり高いから輸入品なのだろう。でもそうそうお目にかかれるものではないから1個購入する。店のおばさんに頼んでその場で割ってもらう。ホテルには持ち帰れないからここで食べるしかないのである。
 奥から出てきたおじさんがナイフで半分に割る。ふたりで何か話している。話の内容は不明だが、どうも表情から判断すると割ってはみたもののまだ未熟、少し早かったようだ。どうしようか? このまま渡す? 悪いから別のを割る? でも高いしなー。よし、せっかくだからもうひとつ割ろう。多分こんな会話が交わされたのだろう。ドリアンの山から別のを選んで割ってくれた。今度のはOKのようだった。
 食べやすいように8等分くらいにして、袋に入れくれた。
 あつみさんとふたり、店の前にあったイスに腰を下ろしてドリアンを食べる。袋の中には悪臭が充満している。袋から果肉を取り出して口に運ぶ。まだ未熟のようで匂いもキツくない代わりに味ものっていなかった。別の取り出して食べる。十分熟した実は匂いも味も強烈だった。実は人工的な感じがして私が果物に求める風味とはかなりの隔たりがある。これならシャカトウ系のチェリモヤやアテモヤの方がいい。匂いを乗り越えて食べるほどではないと思った。こういう経験ができるのが複数人で行く旅のおもしろさなのだろう。ひとりじゃいくらなんでもドリアンには手が出ない。
 このドリアンの山はいつかはなくなるのだろうか。このあたりでもそんなに愛好者、物好きがいるのだろうか、と心配になった。
 
市場のマンゴー
玉井のマンゴー市場、圧巻の一言
 マンゴー市場の光景は確かに壮観ではあったが、その光景はネットの情報サイトで何度も見たものだ。情報が不足していた20年くらい前だったら、台南の郊外にマンゴーの産地があってすごいらしいよ、(地図を取り出して)でもどうやって行くんだろう。台南の観光案内所で聞けば分かるかも、というような手続きを経てようやくたどり着いた玉井の市場でこのマンゴーの光景を目にしたらものすごく感動しただろう。すごーい、すごーいとはしゃいで店を一軒ずつ観察し、写真をたくさんとり、それでも離れがたくて日が暮れるまで周辺を歩き回って、最終のバスに乗り遅れそうになったかもしれない。
 あの頃とは確かに感動の質が変わった。もう初めて目にする光景なんてほとんど残っていないのかもしれない。旅は「発見する」から「確認する」へと変わったのかもしれない。帰りのバスの中でそんなことを考えた。

●バナナの花が咲いていた。
市場のマンゴー
箱庭では超特急でバナナの花が咲いた
 台湾経由で石垣島へ。見上げるほどに成長したバナナに早くも花が咲いていた。あの花は果たして実をつけてくれるのだろうか。バナナすごーいと喜んでいるとあれは草だから成長は早いけどゾウムシが入ったらいっぺんで終わりだからねと何人かの人に釘を刺された。10cmほどの島バナナは小さいながら適度な酸味があって美味しい。島で島バナナをずっと食べていたら癖になって北海道でもバナナを買ってみたけどまるで違った。未熟果を人工的に完熟させるのと完熟した実をとって食べるのとの違いだろうか。ともかく楽しみなことだ。
 
●パッションフルーツのつるきり
 前回、あんなに思い切りよくツルを伐ったのに棚はもうジャングルと化していた。前にも増して思い切りツルを伐る。石垣島でパッションのつる切りを体験して以来、北海道の菜園でもツルムラサキや雲南百薬、胡瓜やゴーヤーのツルをどんどん切り詰めるようになった。おかげで例年に比べて菜園がスッキリしたように思う。
 
●整備進む
市場のマンゴー
箱庭、4方向から引っ張って
大切なアボカドを補強する
 雑草よけのために箱庭全面に張り巡らした防草シートがはがされていた。幼かった苗木が雑草に負けないようにと植えつけの時に張ったものだが、苗木もだいぶ成長したからもうはがそうねとおばあと相談していたのである。
 防草シートは雑草は防ぐけど、水の浸透は妨げるし、黒いから熱を吸収して地温を上げるという弱点もある。あースッキリした。時々草刈り機(こちらではビーバーという。ビーバーいう商品名が刈り払い機全体を指すようになったのかもしれない)で雑草を刈れば大丈夫だろう。
 
●台風対策
 箱庭の果樹の中でもとりわけ期待をかけているのが、アボカドとシャカトウ。これらの木の周囲をパイプの枠で囲い、幹とパイプをヒモで繋いで強風に耐えるよう神田さんに補強してもらった。木に添わせる1本の支柱と違って四方向から木を支えることになるからずいぶんと強力な台風対策になるだろう。最近植えたビリバ(シャカトウの仲間らしい)も補強。これでいつ台風がやって来ても大丈夫のハズだが、今年は大きな台風はまだ来ていない。備えあれば何とかで、ひと安心。
 
●雨が降らない  今年の夏は気温が異常に高くて雨量が少ないらしい。いくら水をやっても地面はカラカラ、ザッと降ってすぐに止んでしまうスコールのような雨やぽつぽつ程度の雨は降るけどまとまった雨は降らないという。それで水をたっぷり撒く。ついでにHB 101を全員に施す。少しは元気になってくれると嬉しい。
 
 辺野古に行こうと思ったけど旧盆で抗議活動はお休みだった。次回はぜひ。


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